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2つの分析の形式(ヴィゴツキー『思考と言語』)

 ヴィゴツキーは『思考と言語』において、心理学の分析に2つの異なる形式があることに注意をうながします。そのひとつがつぎのような形式です。こちらはよくないものとして提示されます。すこし長いですが、そのまま引用します。

 

「心理学的分析の第一の方法は、複雑な心理過程全体を要素に分解するものとよぶことができよう。これは、水を水素と酸素とに分解する科学的分析に等しいものといえる。このような分析の本質的特徴は、その分析の結果、分析される全体とはまったく異質な産物―その全体に固有な特質をうちに含まない要素、その全体が決してあらわすことのできない多数の新しい特質をおびた要素―が得られるということにある。思考とことばの問題を解決しようとしながら、それをことばと思考とに分解してしまう研究者は、水の何かの性質、たとえば、水はなぜ火を消すのか、なぜ水にはアルキメデスの法則があてはまるのかの科学的説明を求めるにあたり、これらの性質の説明の手段として、水を酸素と水素に分解する人々とまったく同じことになるだろう。かれらは、驚いたことに、水素そのものが燃えるものであり、酸素もまた燃焼を助けるものであって、これら要素の特質からは決して全体に固有の性質を説明できないということに気づく。これとまったく同じように、言語的思考を、まさに全体としてのそのものに固有な本質的特性の説明を求めて、個々の要素に分解する心理学者は、いまや全体に存在する統一の諸要素を無駄に探求することになろう。分析の過程で、それらは蒸発し、気化してしまい、諸要素間の外的機械的相互作用を探求することしか彼には残らないだろう。そして、それをもとに純粋に思弁的な方法を通じて、分析の過程で消失した、しかし説明の必要な特質を再構成することになるだろう。」(ヴィゴツキー,2001,p16)

 

それでは、こうした分析の形式とは異なるもうひとつの分析の形式とはどのようなものなのでしょうか。

 

ヴィゴツキー,L.S.柴田義松訳 2001 新訳版・思考と言語,新読書社.

 

(担当教員)

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