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Tsuchikura Laboratory

分析手続きの参考資料(YNU)

 YNUの集中講義で質的分析の課題に取り組んでもらいました。みなさんとても熱心に取り組んでくれて、おもしろい視点も得られました。受講者のみなさんにとっては、ほかのチームの分析手続きを知ることで、方法論をふりかえることができるでしょうし、本学の学生にとっても方法論を考える際の参考資料になると思います。そこで、分析結果の内容には踏み込まず、分析手続きの特徴をメモとして記しておきたいと思います。(受講者のみなさんには許可をいただいています。)
 課題は2種類あり、チームごとに選択してもらいました(1.アマゾンのレビューの内容分析、2.ある授業を受けた受講者の感想の分析)。なお、方法論の参考資料とすることが目的ですので、大胆に説明を要約したり、表現を変えた場合があります。


1.アマゾンのレビューの内容分析

 以前アマゾンの『殉愛』のレビューの分析レポートをにブログに掲載しました。そこでは、テキストデータにたいしてトップダウンにコードをわりあてる分析を行ないました。今回は、同一のデータをボトムアップに分析してもらいました。データの詳細はレポートをご覧ください。

 共通する手続きはつぎのとおりです。すべてのデータを読んだ上で、RQを設定します。チームによっては、一度ボトムアップにカテゴリを生成したうえで、あらためてRQを設定しています。その後、RQを明らかにするのに適したデータを抽出して分析を行なっています。一見すると思いつきのように見えるRQもあるかもしれませんが、RQ自体が試行錯誤の果てに見いだされたものです。

A・K・Mチーム

RQ.本の内容にふれていないレビューの特徴を明らかにする。

  • 全レビューから、本の内容に言及していないレビューを抽出。
  • 意味のまとまりごとに切片化し、KJ法をもちいてボトムアップにカテゴリを生成し、特徴を明らかにした。
  • 生成されたカテゴリの視点であらためてデータを見直すと、スキャンダル報道の前と後でカテゴリに違いがありそう。
  • そこでRQを追加。スキャンダル報道の前と後で、カテゴリにどのような違いがあるかを検討(トップダウンの分析)

 
I・T・Tチーム

RQ.高い評価をしているレビューと低い評価をしているレビューの特徴を明らかにする。

  • 全レビューから、5つ星のレビューと1つ星のレビューを抽出。さらに、それぞれについて一定の抽出手続きでレビューを抽出。
  • 5つ星のレビューと1つ星のレビューを独立にボトムアップに分析し、それぞれを説明するカテゴリを生成。
  • その上で、共通する点と異なる点を論じる。


K・H・Yチーム

RQ.スキャンダル報道後に高い評価をしているレビューがある。その特徴を明らかにする。

  • スキャンダル報道後になされたレビューを抽出。さらに、4つ星以上(高評価)のレビューを抽出。
  • ボトムアップにカテゴリを生成したところ、「低評価のレビューへの言及の仕方」のヴァリエーションとしてまとめることができた。


I・K・Sチーム

RQ.批判や不満のレビューが多いものの、スキャンダル報道に便乗しているだけに見えるものも多い。つまり、批判や不満のレビューをすべて分析しても、作品にたいする批判や不満の“正当な評価”とは言いがたい面がある。そこで、やしきたかじん氏のファンのレビューを対象として、批判や不満の特徴を明らかにする。

  • 全レビューから、まず、批判や不満を表明しているレビューを抽出。
  • つぎに、やしきたかじん氏のファンであることを示す記述があるレビューを抽出。ボトムアップに特徴をまとめた。

 

U・O・S・Mチーム

RQ.レビューに含まれる「?」の意図の特徴を明らかにする

  • レビューに「?」が含まれるレビューを抽出。意味のまとまりごとに切片化し、さらに「?」が含まれる切片を抽出。
  • 「?」が含まれる切片に、意図を簡潔な言葉で表現するコードをわりあてる。これをボトムアップにまとめる。
  • 「?」の用法にどのようなヴァリエーションがあるのかを示した。


2:ある授業を受けた人びとの感想の分析

 実践を含む授業の実施後に、受講者に書いてもらった自由記述のアンケートを分析してもらいました。データはお世話になっている研究者から提供していただいたものです。

 こちらのデータは上記1と比べると、データの数があまり多くないこと、1つひとつの感想が長くないことから、RQに応じて分析対象をしぼるという手続きをとらず、シンプルにボトムアップにカテゴリを生成しました。

 細部に違いはありましたが、3チームに共通していたのは、複数の小カテゴリを含む、「授業の内容」、「授業の形式」、「授業にたいする反応」、「授業を受けて生じた変化」といった大カテゴリが見いだされた点、図式化する際にカテゴリを時系列に位置づけた点です。しかし、ボトムアップに得られた結果を説明する工夫には違いがみられました。ここでは得られた結果の示し方の工夫をメモしておきます。

I・T・Yチーム

大カテゴリをまたいで存在している、小カテゴリの相互の関連を丁寧に説明することで、どのような「授業の内容」がどのような「授業にたいする反応」や「授業を受けて生じた変化」につながるのかを整理した。

 

I・S・Sチーム

「授業にたいする反応」と「授業を受けて生じた変化」内の小カテゴリをポジティブ/ネガティブに描きわけることで、全体像を明瞭に示している。

 
S・S・Tチーム

“今回の授業を受けた人の感想からボトムアップに見いだされた説明枠組み”を、“過去の当該分野の授業を受けることで生じる経験として想定されること”と比較することで、この授業の際立った特徴、当該分野の教育の歴史的展開を明らかにしようとしている。

(担当教員)

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