学習の階型(Bateson, 1972)
●ゼロ学習:入力(刺激)にたいして出力(反応)が一定。
●学習Ⅰ:刺激にたいする反応が定まる定まり方の変化。刺激にたいして、t1における反応と、t2における反応が異なるようになる。はじめの反応に代わる反応が、選択肢群のなかから選びとられる。
・前提として、t1とt2における刺激、コンテクストは同じであると想定している。
・コンテクストの再現という前提をおかないならば、すべての学習はゼロ学習に収まる。
・学習を変化として扱う理論では、同じコンテクストが繰り返されうるという前提が必要不可欠。
・あるシークエンスに置かれた刺激を「刺激」と判断する実験者は、参加者がそのシークエンスをどのように括っているかについて仮定を行っている。
●学習Ⅱ:学習Ⅰの進行プロセス上の変化。選択肢群そのものが修正される変化。学習のしかたの学習。
・例:道具的条件づけのコンテクストを経験した結果、つぎのコンテクストにおいて、道具的条件づけのコンテクストであろうという期待のもとに行動する。
・例:反復学習(学習Ⅰ)、反復学習の上達(学習Ⅱ)=反復学習というコンテクストの学習。
・コンテクストの括り方の変化。
・学習のしかたが適切であったときには、学習Ⅰの進行が効率的に進む。取り違えたときは学習Ⅰの進行に遅延が生じる。
●学習Ⅲ:学習Ⅱの進行プロセス上の変化。選択肢群がなすシステムが修正される類の変化。
・習慣からの解放
●学習Ⅳ:学習Ⅲに生じる変化。
・地球上に生きる成体の有機体がこのレベルの変化に行きつくことはないと思われる。ただし、系統発生上の変化は学習Ⅳに相当するレベルに踏み込んでいる。
※ベイトソンは学習の階型を説明するためにさまざまな事例を取り上げる。事例を通じた整合性がみられているのかどうかがわからない部分が私にはある。ただし大枠では上記のようになるだろう。
コンテクスト・マーカー
・コンテクストAとコンテクストBは異なるという情報
コンテクストのコンテクスト・マーカー
・(コンテクストAとコンテクストBを含む)コンテクストX(例:劇中)とコンテクストY(例:日常)は異なるという情報
有機体の学習
・プラナリア:学習Ⅰのレベルを越えない
・人間:稀ではあるが学習Ⅲに達する
(文献)
グレゴリー・ベイトソン 2000 学習とコミュニケーションの階型論(『精神の生態学 改訂第2版』に収録),新思索社.
(担当教員)