技術文化のモデル(川田順造,2014)
〇技術文化(technological culture)
「技術は、いわゆるハードウェアとしてだけ存在するのではない。世界大の文化比較の視野でみれば、技術はある文化の世界観の具体化された一側面であり、他方、その社会の政治的・社会的人間関係のなかで実現され、運用される。」(p100-101)
〇技術文化の普遍的なモデル
・モデルA:二重の意味での人間非依存性(例:フランス)
・モデルB:二重の意味での人間依存性(例:日本)
・モデルC:与えられた状況の最大限の活用(例:旧モシ王国)
〇3つのモデルにおけるヒトと道具の関係
・モデルA:道具の脱人間化
・モデルB:道具の人間化
・モデルC:人間の道具化
〇道具の脱人間化
・人間の巧みさに依存せず、誰がやっても同じように良い結果が得られるように道具を工夫する指向性
・人力を省き、畜力、水力、風力など、人力以外のエネルギーをできるだけ利用して、より大きな結果を得ようとする指向性
→ 機能の特化した物的装置を用いる
〇道具の人間化
・人間の巧みさによって単純で機能未分化な道具を多機能に使いこなす指向性
・良い結果を得るために、人力を惜しみなく投入する指向性
→ 人体への着脱が自在・容易で、物的装置として単純な道具を、使う人間の「巧みさ」で上手に使いこなす
〇人間の道具化
・身体の特徴を活用して、道具をもちいた活動を効果的に行なう指向性
・例)柄の短い鍬を使う際に、ラクに前屈する長い上半身と長い腕を、鍬の長い柄のようにして使う
・例)柄のない鍛冶の槌の柄として長い前腕を用いる
・例)ろくろを回転させて土器の成形をするのではなく、人間が立って深く前屈したまま土器のまわりを回る
・例)側面でゆるやかなS字形を描く、骨盤の前傾した体幹で、荷の重心を垂直に支える
以上の枠組みと関連して、技術文化と関連する身体的特徴や歴史的経緯、道具の擬人化・道具への感情移入・道具のフェティシズムを生みだす要因の説明など興味深い議論が多い。
文献