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Tsuchikura Laboratory

それは何の一部なのか?

「モデル〔組織の理念的モデル、ヴェーバーの官僚制〕では、仕事に応じて細かな分業が計画されるが、そこでも別の対立関係が生じる。そのモデルは、理論上、効率性を高める要因と言われているが、実際には「専門閉塞」を生じがちである。組織のメンバーは、狭く区切られた業務を迅速かつ効率的に履行するための専門的技能を身に付けるが、次第に自分の仕事によって広範囲に予期しない結果が生じることが見えなくなる。かれらは、自分の活動の不都合な結果を気に留めなくなる。自分の活動が機械的な繰り返しになることで、それが自分の仕事全体、ともに働く人々、組織の目標全般にとって不都合な結果を生んでも気にならなくなる(これは、組織のメンバーが、戦略的マネージャーからいつも聞かされる批判である。もっとも、組織のメンバーも自分たちの仕事の専門性を理解していないとマネージャーを非難するが)。組織のメンバーはまた、自分の技能の狭さゆえに、日々変化し続ける環境に適応できず、十分なスピードと柔軟性をもって不慣れな状況に適応できない。言い換えれば、組織は完全な合理性の追求に取り憑かれるが、その果実を得ることはできない。組織は硬直し、柔軟性を失い、仕事の方法も変化する環境に迅速に適応することができない。遅かれ早かれ、それは、非合理的な決定の温床と化すであろう。」

(バウマン・メイ,2016,p120)

 

バウマン,Z.・メイ,T. 2016 社会学の考え方(第2版),筑摩書房

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