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表象概念の再検討(鈴木宏昭,2016)

表象概念の再検討(鈴木宏昭,2016)

主として4章

・伝統的な見方:表象は、外界を正しく反映し、規則正しく配置され、永続的に存在するもの

・知覚表象:チェンジ・ブラインドネス

→知覚表象は「世界を正しく写し取り、安定して心に存在する」とは言いがたい

・記憶表象:構成的記憶、虚偽の記憶、ソースモニタリングの失敗

→記憶表象は「過去を安定して保持している」とは言いがたい

・知識表象:断片化された知識をもちいたインタラクティブなソースの形成

→知識表象は「階層化され、固定したもの」とは言いがたい

・むしろ表象は、はかなく、うつろいやすく、その場で作り出される

・状況に応じて、多様な複数の認知的なリソースが同時並列的に活性化し、思考のゆらぎが生み出される(生成的な表象観)

 

7章

従来の表象観:外界を正しく反映し、体系だっていて、言語化可能

新しい表象観:もろく、はかなく、断片化されている。外界を正しく反映していない。言語化の可能性が少ない。状況との相互作用で挙動が決まる。ゆらぐ。

 

「ここまで変えてしまうと、同じ〔表象という〕用語を使っていいのだろうかという気持ちも湧いてくる。・・・略・・・確かに伝統的な意味での表象は、もうないと考えたほうがよいだろう。・・・略・・・〔ただし〕それが部分的なものであろうと、体系性を持っていなかろうと、言語化の可能性がなかろうと、外の世界を何らかの形で私たちの中にとどめておく代理物が私たちの中に存在しないと考えることは、ナンセンスだと思う・・・略・・・」(p266;〔 〕は引用者による補足)

 

鈴木宏昭 2016 教養としての認知科学東京大学出版会

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