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来し方をふりかえって・・・

文化人類学者のふりかえり(前川,2018)

文化人類学はかつてフィールドワークという方法論を含め、種々の社会科学、人文学に原理的な方向性を示す学問でもあった。それが現在では人類学が参照されなくなっている。」(p.3)

 

その理由として、批評が内在的なものでなくなったことを挙げる。

 (その意味の詳細はぜひ本文を読んでください。)

 

「とくに日本においては、フィールドワーク派と批評派の棲み分けと、派生的な「内旋」が続き、他の学問に参照されることもない縮小均衡した学問に甘んじることとなった。」(p.19)

(とは言え、傍からは近年は盛り返しているように見えます。)

 

社会心理学者のふりかえり(スミス・ハスラム,2017)

「現代の社会心理学的研究は、ときに統計的洗練や方法論的細部にはまりこんでいる(イアン・ウォーカーの言う「非の打ち所のない枝葉末節」Walker, 1997・・・他の参照文献略・・・)と批判される・・・略」(p.3)

 

非の打ち所のない枝葉末節・・・

 

それぞれふりかえっているポイントは異なりますが、根本で重なる部分もあります。

それが授業で説明したポイントです。どこを目指せばよいのか、簡単には答えが出ませんね。

 

●フィールドワークと「発見」

以下、箕浦の議論とも重なります。

1980年代初頭までに人類学徒となった人の多くは、学部では別の分野を学んでいたという。「他学問での「還元主義」に飽き足らず、他学問では経験できないフィールドでの「発見」に大きな意義を見いだしたのだ。」(前川,2018,p.40脚注)

 

では、その発見とはどのようになされるのか。

「文化を対象とする人類学者の民族誌はフィールドワークという実践によってもたらされる。そこでは、フィールドワークにおけるカルチュア・ショックの体験から、対象とする社会の文化と自らの背景となる文化の両方を、その対照性において同時に捉えるということが原体験となる。・・・略・・・重要なのは、その際に〔カルチュア・ショックとそこからの適応にともない両文化が見えること〕自/他の差異を通して両方の文化を客体化し、その結果、自/他の両方の文化を「創造」することなのである。」(同,pp.24-25)

 

文献

前川啓治 2018 はじめに,前川啓治・箭内匡・深川宏樹・浜田明範・里見龍樹・木村周平・根本達・三浦敦 2018 21世紀の文化人類学―世界の新しい捉え方,新曜社.(ワードマップ)

スミス,J.R.& ハスラム,S.A. 樋口匡貴・藤島喜嗣監訳 2017 社会心理学・再入門,新曜社

 

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