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アートはまちの漢方薬(熊倉,2014)

アートプロジェクトをどうとらえるかという問題について、熊倉(2014)から引用します。

アートプロジェクトは現在、アート関係者のみならず、社会そのものに関わるものとして注目を浴び始めている。・・・中略・・・社会的便益を有するものとしてさまざまな指摘や報告があるとしても、アートプロジェクトが社会的課題への特効薬である、と考えるのは早計である。アートプロジェクトは社会的課題に対しての具体的な回答や改善策を提示する可能性を秘めてはいるが、その因果関係を詳らかにできるものではない。あくまで社会の中に新たな文脈を創出し、既存の回路と異なる接続や接触を生み出すことで、これまでの価値観では創出できないような視座や行動力をもたらす「漢方薬」的な存在なのである。(熊倉,2014,p.29)

こうした位置づけは、もしかしたら、アートで問題を解決しようと試みている人たちをがっかりさせるものかもしれません。しかし、長期的な視点をとれば、アートが問題を解決する手段と安易にみなされるようになってしまうことのほうが恐ろしいのかもしれません。学問が有用性の軸で語られるようになって失われたことの大きさを思うと、そう感じざるを得ません。

 

熊倉純子(監修)2014 アートプロジェクト―芸術と共創する社会,水曜社.

 

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