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小論課題の補足

批評について補足しておきます。まず、基本事項を佐藤(2006)から引用します。 

大学で教師は、自分の意見をきちんともつこと、独創性、オリジナリティがあることを求める。これらは、批判的・論理的に思考することによって養われる。しばしば誤解があるのだが、自分の意見をもつというのは、好きとか嫌いとか主観的で勝手な感想を述べることではない。オリジナリティといっても、ただ人を驚かすような突飛な発想を求められているわけではない。(中略)

自分の意見を述べる際には、その意見が一定の論理的根拠をもって他の人にも正しいと受け入れられることが求められている。(中略)

批判的・論理的思考は、本を批判的に読むことによって訓練される。本を批判的に読むというのは、むやみにあら探しをすることではない。そこで示される事実がきちんと検証できるのか、そこでの主張は論理的に正しいかということをじっくり考えながら読むということである。もととなっている資料を見ることができれば、自分の目で確かめて、同じテーマ、あるいは近いテーマで書かれた本と比較してみるのも、批判的読解の作業である。それらを行うことによって、もとのテキストの著者がどのような道をたどってその結論に至ったのかを追体験することができるし、そこから学ぶことも非常に多い。(p.71)

 

前提として、対象となるテキストを適切に読めていることが重要ですね。

 

さて、自分がまとめた主張について、以下のことを確認してみてください。

・主張は、テキストの内容を理解し、意図を汲んだうえで、なされているでしょうか?

・・テキストの内容をあえて拡大解釈したり、実際にはテキストが述べていないことを、あたかも述べているかのようにとらえたりして、わかりやすい「敵」にしてしまっていませんか?

→読者をミスリードしてしまいます。また、「わかっている」読み手には、書き手が信頼に足らないことを示すことになってしまいます。

・主張は、テキストよりも説得力をもつものになっていますか?(第三者に両方を提示したときに、より説得力があると評価してもらえそうですか?)

・・テキスト全体に否を突きつけるのは、もしかしたら楽に見えるかもしれません。(誤解しているかたもいるかもしれませんが、批評は、テキスト全体に逆らうこと、ではありません。)

・・それをいったんやめて、テキストの論理展開を追ったうえで、別の議論を展開する余地がある部分を見つけてみましょう。

・批評の相手が目の前にいても主張できる内容、そして表現方法でしょうか。できれば、その相手とのディスカッションが実りのあるものになるとよいですね。

 

佐藤望(編)(2006)アカデミック・スキルズ,慶應義塾大学出版会.

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