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サードプレイスと対話の場の重層性

 オルデンバーグはサードプレイス(第三の場所)をつぎのように定義する。

家庭と仕事の領域を超えた個々人の、定期的で自発的でインフォーマルな、お楽しみの集いのために場を提供する、さまざまな公共の場所の総称(オルデンバーグ,2013,p59)

たとえば、ドイツのビールガーデン、イギリスのパブ、フランスのカフェ、古典的なコーヒーハウスなどを取りあげている。なお、第一の場所は家庭、第二の場所は労働環境を指す。上記書籍ではサードプレイスには複数の機能があることが説明される。

 こうした議論と関連するものとして、劇作家・演出家である平田オリザの議論がある。平田オリザは、対談のなかで、コミュニケーションの場が重層性をもつことの重要性を指摘する。重層性のある社会では、人びとはさまざまな対話の場にかかわることが求められる。具体例として、社内の会議のバリエーションを挙げている。重層的なコミュニケーションの場のポイントは、それを意図的にデザインすることにある。

ある地域の一人の子どもに焦点を当てて考えた場合、「その子どものかかわり合う場所が、家庭と学校だけではない社会」を人為的につくっていく必要がある。(北川達夫・平田オリザ,p70.平田の発言)

これと関連して、重層性をつくりあげる3つの層を挙げている。

  • 利益共同体
  • 地域共同体や血縁共同体
  • 個の共同体:芸術、文化、スポーツなど、個人が自由意志で参加できるもの

(北川達夫・平田オリザ,2008.平田の発言)

 

いずれの議論も、コミュニケーションと場の関連に焦点をあてている。議論には異なる点もあるが、重要な共通点もみてとれる。そのひとつは、コミュニケーションの場が発達・学習の機会を提供すること、そして、それがアイデンティティと結びつくことである。こうした議論は、コミュニケーションの場を行き来することに焦点をあてれば、心理学の状況論でなされている越境(boundary crossing)の議論とも関連する。

 

【引用文献】

北川達夫・平田オリザ 2008 ニッポンには対話がない―学びとコミュニケーションの再生,三省堂

オルデンバーグ(下記参照)

 

(担当教員)

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