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イノベーションの制度設計のヒント

シーナ・アイエンガーのインタビューからイノベーションを起こすヒントになりそうな部分を引用します。
 
「日本は、イノベーションに対する敬意をもっと文化のなかにつくりださなければなりません。そのためには、失敗に対して寛容になることです。ワイルドなアイデアをもっている人からしか、イノベーションは生まれてきません。」(p28)
 
「日本には「失敗は恥」と思う傾向がありますね。・・・略・・・シリコンバレーベンチャーキャピタリストがまず何を話すかというと、自分の過去の失敗です。それが名誉の勲章であると考えているのです。」(p28)
 
「大胆な決断をするには、リスクを取る能力を必要とします。つまり、失敗を恐れないということです。大胆な決断をするときはどんなときでも、失敗のリスクは高くなるものです。・・・略・・・」(p32)
 
「アメリカにインテュイット(Intuit)というソフトウェア開発の会社があります。同社がいま取り組んでいるのは、「迅速な実験」(rapid experiment)という方式です。まず、従業員を小さなグループ・・・略・・・に分類します。そして、それぞれのグループに資金を与え、異なったビジネスアイデアに挑戦させます。/ほとんどのアイデアはうまくいきませんが、成功すると莫大な儲けが入ってくる。うまくいかなくても、全社的なプロジェクトで失敗した場合より、ムダになるお金も少ない。・・・略・・・会社内だけではなく、社会全体でこうした試行錯誤を積み重ねていけば、非常に面白いことが起きると思います。」(p41-42)
 
・ポイントのひとつは、イノベーションをつねに失敗との関連で説明することです。
・引用部分以外では、よい失敗の仕方、リスク回避の方法は、(失敗の)経験を通じて学べることにも言及しています。
イノベーションは必ずしも先読みできるものではありません。だからこそ、イノベーションを起こすこととリスクを回避することをトータルで実現するような環境を整えることが重要であることがわかります。
・注目したいのはさいごの点です。ベネフィットの獲得に向けて、安心して失敗できる状況を(個人の裁量に委ねて作らせるのではなく)、制度として設けることです。これにより、前半で論じているような個人特性や文化特性とみえるものも変化していくことが考えられます。「制度」についてはあらためて説明します。
 
文献
シーナ・アイエンガー(大野和基編) 2013 知の最先端,PHP研究所.(PHP新書
*大野による多数の識者に対するインタビュー集
 
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