田中(2017)の提案する「マイパブリック」という造語
・自分で作る公共。自家製公共。個人が作る施設公共(p20、22)
・「自分の時間やおかね、労力を使って、周囲のひとにひらかれた場をつくる」(p20)
「公共が「みんなのもの」ひとつしかないことが、そもそも問題だったのではないだろうか。「みんなのもの」と自称してしまうから、クレーマーの苦情ひとつに過敏になって、それまでの愛すべき豊かないとなみを次々ととりやめて、個性もなにもない、つまらないものに落ち着く方向になってしまったのではないだろうか。/マイパブリックは、「みんなのもの」という責任を負わない。作り手本人がよかれと思うものを、やれる範囲でやる。それをフィーリングの合うひとが使う。そうでないひとは別のマイパブリックを使ったり、あるいは自分でつくったりする。そんな在り方だって、あるのではないだろうか。」(p22)
田中は自分の事務所をひらいてノンアルコールバーをはじめます。この経験から、「客」からおかねをとらないこと、おかねにみあう責任を担わないこと、他者に期待をしないこと・期待をされないことの意味を考えます。
「わたしはだんだん気付いていった。待てよ?もしかしたら今までわたしは、ものやサービス、能力や労働のやりとりを、対価でもって精算することに、あまりにも囚われすぎていたのではないだろうか?相手がそれを求めるなら素直に従うけれど、わたしから提供する場合、・・・略・・・わたしには元々、おかねを取らない自由だって、あったのだ。」
交換と贈与の議論との関連を考えてみてください。
この著作はノンアルコールバーをおもいつき、軌道に乗せる経緯、その後の展開が読ませるだけでなく、自身の活動にもとづくまちづくり構想のアイディアなど興味深い論点が多数含まれています。
田中元子 2017 マイパブリックとグランドレベル,晶文社.