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Tsuchikura Laboratory

行動を説明する4つのアプローチ

ある行動がなぜ存在するのかを説明する4つの要因を長谷川(2009,p.12)から引いておきます。

 

・至近要因:その行動は、どのような直接のメカニズムによって引き起こされるのか

・発達要因:その行動は、個体の成長と発達の過程でどのようにして完成されてきたのか

・究極要因:その行動は、どのような機能を果たしているのか、どのような適応的価値があるからその行動があるのか

・系統進化要因:その行動は、その動物の祖先のどのような行動から、どのような道筋を経て現在の行動になったのか

 

シジュウカラの雄は春になるとさえずる」という行動について、4つの要因からアプローチする例。こちらも長谷川(2019,p.13)から。

 

・至近要因:日照時間が長くなってきたことを感知する脳内のメカニズムによる説明。日照時間の変化を感知により生じたことが、性ホルモンに働きかけてさえずりを促すメカニズムによる説明。

・発達要因:ヒナの脳内に生まれつき備わっているさえずりの「鋳型」の存在やそれが、成長の過程で同種の雄のさえずりを聞くことによって修正を受けること、自らがさえずって練習することで完成する、というプロセスによる説明。

・究極要因:さえずりは、雄どうしのなわばりをめぐる競争と、雌に対する求愛の機能を果たしていることによる説明。さえずることが配偶相手の獲得に重要であることによる説明。

・系統進化要因:現在のようにはさえずらなかった祖先の鳥のどんな鳴き声が、どのように変化して現在のさえずりになったのかの歴史的プロセスによる説明。

 

「ある行動がなぜ存在するのか」という問いを立てるときに、自分はどの水準の説明を求めているのかを考えてみるとよいと思います。

 

文献

長谷川眞理子 2009 動物の生存戦略―行動から探る生き物の不思議,左右社.

Timbergen, N. 1963 On aims and methods of ethology. Zeitschrift für Tierpsychologie, 20,410-433.

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