tsuchikulab

Tsuchikura Laboratory

重回帰分析の補足

決定係数の値をどうみるか、多重共線性の問題を回避することを念頭に、説明変数間の相関が高すぎるとはどのくらいかという課題がありました。

 

「人間科学において、弱い相関係数を認めるのが相関係数0.3くらいからであったことを考えると、重相関係数も0.3くらい、決定係数で考えれば0.3^2≒0.1くらいから何らかの予測ができていると考えるのが通例です。」(石井,2014,p.188)

 

「回帰係数の符合が相関係数と異なるのは、多重共線性が生じているひとつの目安ですので、注意して結果を見てみるとよいでしょう。しかし、符合が異なることがあれば、いつも多重共線性が起きているとは限りません。」(清水・荘島,2017,p.87脚注)

「多重共線性の原因となる変数を知るための指標として、分散拡大係数(variance inflation factor:VIF)があります。・・・VIFが10を超えると、多重共線性が生じると言われています(たとえば早川,1986)。・・・しかし経験上、VIFが5ぐらいでも、標準誤差が大きくなって解釈が難しくなることもあります。」(清水・荘島,2017,pp.87-88)

 

関連して説明変数が多いことの問題も指摘されました。

相関係数とは違い、重相関係数は独立変数の数に影響される。変数が増えれば増えるほど説明率は増大していく。従って重相関係数の値を絶対的な値として評価することはできない。変数が5個で重相関係数が0.95は高い値と判断するかもしれないが、変数が50個で0.95なら逆に低い値と見なされるかもしれない。」(小野寺,2015,p.113)

 

「重回帰分析では、説明変数の個数が増えれば・・・寄与率は自動的に大きくなるという性質がある。つまり、説明変数が1つの場合の寄与率と説明変数を2つにした場合の寄与率とを比べると、つねに後者の方が大きくなる。意味のない変数を説明変数に追加することによって見かけ上の寄与率が増加するのは好ましくない。そこで・・・自由度を用いて調整(する)・・・自由度調整済寄与率(をもちいる)」(永田・棟近,2001,p.70)

 

文献

石井秀宗 2014 人間科学のための統計分析.医歯薬出版.

永田靖・棟近征彦 2001 多変量解析法入門.サイエンス社

小野寺孝義 2015 重回帰分析,小野寺孝義(編)新訂 心理・教育統計法特論.放送大学教育振興会

清水裕士・荘島宏二郎 社会心理学のための統計学誠信書房

Copyright©2013- tsuchikulab All Rights Reserved.