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Tsuchikura Laboratory

本ブログの案内版

*本ブログは講義やゼミ活動(法政大学・土倉ゼミ)に関するものです。

*本記事はブログの案内板です。新しい記事は、この記事のつぎからになります。

  

◆講義について

================ 2020年度・春学期 ===============

社会心理学1:こちら

・外書講読3A:こちら

・学際研究5(場の質的心理学):こちら

・演習1:こちら

・演習2:こちら

・演習3:こちら

*情報機器の利用に関するアンケートこちら

・教員からアンケートへの回答を依頼された方は上記から回答してください。

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・YNU集中(2019):こちら こちら ※しばらくリンクを貼っておきます(2/29)

 

◆ゼミでの活動について

・準備中(2020年度)

 

*過去の「ゼミ活動・卒業論文」「ゼミ以外の調査」「市民講座・サイエンスカフェ・ワークショップ」「過去の講義」「研究方法の資料」はアーカイブス(こちら)にあります。

*それ以外の過去の講義資料は、カテゴリー「講義資料」からご覧ください。

(2018/09/07作成;適宜加筆修正)

元も子もない例

架空の例で考えてみます。

・オンラインバンクでの振り込め詐欺が問題となり、対策をとることが必要になった。

・入金の手続きを煩雑にするという対策をとった。(それがねらいではないとは言え、結果的にはそう表現しうる対策ということです。)

・結果的に振り込め詐欺は減った。

 

さて、これで万事解決でしょうか。

・この「成果」が、対策をとったことでそもそもオンラインでの振り込みが利用されなくなったことと関連するとすれば、「成果」は、オンラインを利用してもらうという当初の目的と引き換えに得られたことになります。

・さらに、全体的に振り込みが利用されなくなったのに加えて、全振り込みにおける振り込め詐欺の割合が減っていない(または、むしろ増えた)とすれば、むしろ、目的を果たせなくなったことの不利益の方が課題になるのかもしれません。

 

もうひとつ例を挙げてみます。

・電車内でスマホの画面を他のひとにみられたくないと思うとしましょう。

・その対策として画面にシートを貼りました。

・結果として、自分にも画面が見えにくくなり、不便に感じている。

 

具体的な例を考えてみてください。

対策が功を奏したのかを把握する分析を考えて、その分析結果にもとづいて、よりよい対策を模索する、ということになります。

なぜ先行研究を読むのか

◇研究が進まない・・・
・ゼミで自分の研究を発表するために、文献(先行研究)を読んでいたはずが、いつの間にか文献を調べること、読むことがが目的のようになってしまうことがあります。
・文献を読むことが目的化してしまい、結局、なかなか研究が進まない、ということもよくあります。
・文献を読むのはたしかに楽しいです。また、「あーでもない、こうでもない」と思考をめぐらせたり、悩んでいる時間よりも、「やっている感」「進めている感」を感じられるので、安心できたりします。
・しかし、研究では、文献を「勉強する」ことが目的ではありません。
・では、研究において、文献を読むことはどのように位置づけられるのか。試みに記してみます。
 
◇研究とは
・ここでは、(社会心理学の)研究を、暫定的につぎのように定義して説明してみます。「関心のある対象について問いをたてて、データをもちいて問いに回答を与えること。」
・・問いのあり方は、仮説検証的なものもあれば、探索的(仮説生成的)なものもあります。ゆるやかには、関心のある対象の説明を目指すのか、理解を目指すのか、に対応します。
 
◇研究のステップ
・研究を進める方法は必ずしも定まっているものではありませんが、つぎのような進みかたがあります。
 
A:関心の所在を明確にする
・自分は何に興味があるのかを自覚(選択)し、それを他者と共有する
B:関心にもとづいて問いをたてる
・興味がある対象について、どのようなことが興味深いのか、おもしろいのか、を言語化し、それを他者と共有する
C:問いにたいして暫定的な説明を与える
・問いにたいしてありうる説明を考え、納得のいく回答を見出す
D:暫定的な説明をデータで裏づける
・回答が妥当なものであるかを確認するための研究計画をたてる
 
◇各ステップで文献を読む意味
・目的は、自分の研究を実施することです。
・あくまで、その手段(のひとつ)として、「文献を読む」ことがあります。
・加えて、上記の各ステップで、文献が、研究を進める上でどのような手段となりうるかは異なると思います。
・試しに各ステップで文献を読む目的を考えてみます。
 
Aの段階:関心の明確化
・自分の関心の所在がよくわからない、ということがあります。
・自分は何をおもしろいと思い、何をおもしろくないと思うのかを知る手段として、文献を読むことができます。
・言うなれば、関心の所在を確認するリトマス試験紙としての文献です。
・このときは、文献を精読する必要はありません。本であれば目次をみたり、拾い読みをしたり、論文であれば、アブストラクトを読むとよいでしょう。
・広く浅くみるなかで、自分は何に興味があるのかが見えてきます。
 
Bの段階:問いの明確化
・自分が興味をもっていること(関心)を自覚することができました。
・しかし、自分が興味をもっていることがあっても、うまく問い(知りたいこと)を立ち上げられないことがあります。
・・自分はその対象に関心があるが、いったいその対象のどんなことをおもしろいと思っているのか、何を不思議だと思っているのかがわからない、といった状態です。
・こうしたとき、問いを言語化する手段として文献を読むことができます。
・言うなれば、問いを言語化する手がかりとしての文献です。
・自分が関心をもっていることは、どのような概念をもちいてアプローチされているのか、どのようなことが論じられているのか、を把握するとよいでしょう。
・・この段階では、関心のあるテーマの概論のテキストなどを読むとよいでしょう。
・しかし、大切なのは、それらを「知る」ことではありません。自分はそのアプローチや説明に「納得できる」のかを考えることです。納得がいかない、おかしい、と思うのであれば、どんなところが納得がいかないのか、おかしいと思うのかを考えるとよいでしょう。
・こうして自分自身の問い・視点がはっきりしていきます。
 
Cの段階:回答(仮説)のしぼりこみ、論の構成
・自分の問いをもつことができました。
・・その問いは、「なぜだろう?どうしてだろう?」という「Why」に近い問いかもしれません。
・・あるいは、「どんなふうになっているのだろうか?」という「How」に近い問いかもしれません。
・その問いにたいして、「こうではないか」という回答(仮の説明)を与えることになります。
・・果たしてその回答は妥当なものでしょうか。他に、より説得力のある回答はないでしょうか。
・・自分の回答が妥当である根拠、他の回答が妥当でないことの根拠を示すことが求められます。
・こうしたとき、回答をしぼりこむ手段、論を構成する手段として文献を読むことができます。
・言うなれば、自分の議論を支える手段としての文献です。
・学術論文や研究者が論文を寄せている論文集を読むとよいでしょう。
 
Dの段階:研究方法の理解
・問いにたいして説得力のある回答をもつことができました。
・その回答が妥当であるかをデータで裏づけていくことが求められます。
・こうしたとき、回答をデータで裏づけるやり方を考えるヒントとして、文献を読むことができます。
・言うなれば、研究手法のお手本(モデル)としての文献です。
・もちろん、先行研究の研究手法をそのまま適用できるわけではありません。しかし
先達が自身の問いを、工夫しながらどのように追究したのか、を知ることは、自分の研究手法を考えるヒントになります。
・理論(概念)レベルで何を検討しているのか、操作レベルでどのようにその概念を取り扱っているのかに注意するとよいと思います。
 
◇おわりに
・各ステップで、何を目的として文献を読むことができるかを、試みに書いてみました。
・これが正しいというものではありません。また、私自身のスタンスと同じでもありません。
・それでも、文献を読み始めたら、本来の目的を見失ってしまった、という場合にはささやかなヒントになるかもしれません。
・文献を読むときは、自分はどうしていまこの本を、論文を手にとっているのか、ということをすこし考えてから読むと道に迷わずに済むと思います。
・と書いたあとで、すぐに矛盾することを言いますが、そうした当初の目的をくつがえす本や論文が見つかり、夢中になれるなら、それはそれで幸運なことです。道に迷うこともまた研究の重要な要素だからです。
 
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