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政策のデザイン(秋吉,2017)

秋吉(2017)にもとづき、議論に関連することを説明します。

 

●政策のデザイン(秋吉,2017,pp.132-141から抜粋)

・政策の、1)目的、2)対象者、3)手段、4)権限、5)財源

・例:生活保護政策

1)目的:生活困窮者の保護と生活の保障、生活困窮者の自立の助長

2)対象者:行政機関によって生活困窮者と認定された住民

3)手段:生活困窮者の世帯に対して金銭や物品が行政から直接支給される

4)権限:生活保護の実施機関である厚生労働省都道府県、市町村、福祉事務所といった行政機関に付与されている。実質的には福祉事務所が実施機関。

5)財源:国、都道府県、市町村でそれぞれ分担する。

 

生活保護法(法律)、生活保護法施行令(政令)、生活保護法施行規則(省令)で規定されている。

・そのほかに、生活保護手帳(マニュアル)、「生活保護手帳別冊問答集」(マニュアル)がある。

 

政令:内閣が法律の執行にともなって定める命令。施行令などの名称

省令:担当府省が法律の執行にともなって定める命令。施行規則などの名称

通達・通知:行政内の上位機関から下位期間に出す命令・指示

実施要領:現場のマニュアル。なぜ作る?

・政策の実施にあたり、現場で上記を一つ一つ参照することはむずかしい

・上記には具体的な状況における判断は記せない

 

政策を実施するにうえで国は法律、政令、省令を定める

担当府省から現場の都道府県・市町村に通達・通知が行われる

現場で運用する(させる)にあたりマニュアルが作成される

 

→具体例を挙げて考えてみてください。

 

●政策デザインにおける「現場知」と「常識知」(秋吉,2017,pp.192-193より抜粋)

・理論知:政策共同体を構成する専門家が有する知識

・現場知:現場での経験によって蓄積されてきた知識。利害関係者(当事者)が有する。

・常識知:社会常識にもとづく判断による知識。一般市民が有する。

 

→アクションリサーチに関する近年の議論との関連を考えてみてください。

 

●政策デザインにおける専門家の位置づけの変化(秋吉,2017,pp.212-214)(※)

従来:合理的政策決定。専門家との関係は、諮問-答申関係

・政策決定の責任者は、専門家に政策問題の分析を依頼(諮問)する

・専門家は、第三者的に、政策問題を分析し、結果を報告(答申)する

→ 専門家は、政策決定過程の外部に位置する。中立的な立場と想定。

 ↓

政策問題は多くの主体が関わり複雑。多様な主体がかかわり政策を検討する必要

 ↓

近年:参加型政策分析

・専門家も政策議論に参加

・・情報を提供する役割

・・一般市民をサポートする役割

 ※さきほどの項目とは「専門家」の意味が異なるので注意

 

→ サイエンスコミュニケーションにおけるサイエンスカフェ、コンセンサス会議との関連を考えてみてください。

 

文献

秋吉貴雄 2017 入門公共政策学,中公新書

未知に開かれること

事例p42

1)対象 →     → 素朴な理解 = 理解不能、おかしい

2)対象 → 専門性 → 専門的な理解 = 理解可能、ありうる

 

以前:アクセスがむずかしい → 専門家が苦労してアクセスする/アクセスに権限が求められた

・おのずと2になり、1を排除していた

 

現在:アクセスが容易 → 非専門家がアクセスする

・かつて起こりがたかった1が起こる。2と葛藤を起こす

・多数派である1は、2の価値下げをはかる

・たしかに1のように素朴にみたら”バカみたい”にみえる

・ただし、特定の色眼鏡をかけることで/現実の規範を括弧に入れて突き進むことで、到達できる場所がある

・すぐに到達できるわけではない。もちろん、失敗におわることも多い。挑戦とはそういうもの。

・ただし、2の価値を認めないと、短期的に「役に立つ」「効率のよい」ものばかりになってしまうおそれ。

・未知に開かれること。さまざまな専門性があることを認識し、敬意を払うこと。

・と同時に、専門性に媒介されない場合、どのように見える(見えてしまう)のかにも配慮すること。

・この議論の多くにおいて、「専門性」を「経験」に置き換えることもできる。

1・4・9・・・の法則とトランス・ビュー

●「何人を対象にして話を聞くか」についての経験則(安田・サトウ,2012,pp6-7)

 

インタビュー対象者数:利点

1人:個人の径路の深みをさぐることができる

4±1人(3~5人):経験の多様性を描くことができる

9±2人(7~11人):径路の類型を把握することができる

16±3人(13~19人):何が見えてくるか

25±4人(21~29人):何が見えてくるか

 

●トランス・ビュー(pp.8-9)

・見方(view)の融合(trans)

・お互いの異なる見方を融合する

↓ これに向けて

1回目:見知らぬ人同士

2回目:名前を見れば、こんな名前の人に会った、と認識できる関係。前回の印象や話を前提に話ができる。

3回目:顔と名前が一致し、お互いがお互いを再認識できる関係。

 

文献

安田裕子・サトウタツヤ編 2012 TEMでわかる人生の径路―質的研究の新展開,誠信書房

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