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Tsuchikura Laboratory

それは何の一部なのか?

「モデル〔組織の理念的モデル、ヴェーバーの官僚制〕では、仕事に応じて細かな分業が計画されるが、そこでも別の対立関係が生じる。そのモデルは、理論上、効率性を高める要因と言われているが、実際には「専門閉塞」を生じがちである。組織のメンバーは、狭く区切られた業務を迅速かつ効率的に履行するための専門的技能を身に付けるが、次第に自分の仕事によって広範囲に予期しない結果が生じることが見えなくなる。かれらは、自分の活動の不都合な結果を気に留めなくなる。自分の活動が機械的な繰り返しになることで、それが自分の仕事全体、ともに働く人々、組織の目標全般にとって不都合な結果を生んでも気にならなくなる(これは、組織のメンバーが、戦略的マネージャーからいつも聞かされる批判である。もっとも、組織のメンバーも自分たちの仕事の専門性を理解していないとマネージャーを非難するが)。組織のメンバーはまた、自分の技能の狭さゆえに、日々変化し続ける環境に適応できず、十分なスピードと柔軟性をもって不慣れな状況に適応できない。言い換えれば、組織は完全な合理性の追求に取り憑かれるが、その果実を得ることはできない。組織は硬直し、柔軟性を失い、仕事の方法も変化する環境に迅速に適応することができない。遅かれ早かれ、それは、非合理的な決定の温床と化すであろう。」

(バウマン・メイ,2016,p120)

 

バウマン,Z.・メイ,T. 2016 社会学の考え方(第2版),筑摩書房

現在において実行不能な提案の意味

「経済理論家または政治哲学者の主要な仕事は、今日政治上では不可能であることが政治上で可能になるように、世論に影響を与えることにあるべきであり、それゆえに、私の提案が現在においては実行不能であるという反対意見は、私がこれらの提案を発展させるのに少しも妨げとはならない。」(ハイエク,1988;森村(2001)より引用)

 

絵空事にみえることを、どうやって現実味があるように、さらには現実に、変えていくことができるだろうか?

・だれが?どこで?どのように?コストはどこから?

   ⇔

・火を絶やさないためにできることは?仲間はいるか?道具はあるか?

 

・「そんなの無理だ」なぜならば「こんな穴がある」「あれと矛盾している」「両立しない」、そう、突っ込んでいい。ただし、時期とタイミングはわきまえるといい。どこまでかたちになったら、どんな突っ込みが仮説(みとおし)の彫琢に寄与しうるか、を考える。

   ⇔

・いまはすべてに応えられなくてもいい。他者の声に耳を傾けるとき、あえて無視するとき、時期がある。答えやすい問題ばかり解いていると、解きたい問題ではなく、解ける問題を探すようになってしまう。

 

ハイエク, F. A. 川口慎二訳 1988 貨幣発行自由化論 東洋経済新報社

森村進 2001 自由はどこまで可能か 講談社

新しいポジション取りに向けた学び

「老人は公の活動に与っていないと言う者はまともな議論をしていない。それはちょうど、船を動かすにあたり、ある者はマストに登り、ある者は甲板を駆けまわり、ある者は淦を汲み出しているのに、船尾で舵を握りじっと座っている舵取りは何もしていない、と言うようなものである。確かに若者のするようなことはしていない。しかし、はるかに大きくて重要なことをしているのだ。肉体の力とか速さ、機敏さではなく、思慮・権威・見識で大事業はなしとげられる。老年はそれらを奪い取られないばかりか、いっそう増進するものなのである。」(キケロー,2004,17番)

 

いつまでも甲板を駆け回っているのはゆるされないのかもしれません。

しかし周辺から十全への学びと新しいポジション取りの学びには「跳躍」が必要にも思われます。

その接続はどうなっているのでしょうか?どうすれば跳躍の負荷を減らすことができるのでしょうか?

 

(補足)

上記のキケローの言葉は、故・金森修先生の講座の動画で知りました。

講義は2013年9月29日に実施されたものとのことです。

 

講演のURLは下記になります。

http://todai.tv/contents-list/lp1hp1/2013fall/04

老年の意味に関する議論は動画の21分頃からになります。

 

文献
キケロー 中務哲郎訳 2004 老年について,岩波書店岩波文庫

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