「「語り方」に注意を払うことは、どのような意味で読者が「語られたこと」をよりよく理解することにつながるのか。」(西倉,2015)
●ライフストーリーを研究するプロセスで
・ライフストーリーを聞くことには、語り手と聞き手の視点のずれが含まれる。
・語り手と聞き手のすれ違いやせめぎ合いを通してずれが顕在化し、聞き手はみずからの構えを自覚する。
・・他者の声に、あらかじめ想定していた声をかぶせて聞いてしまっていた。
・・自分の解釈枠組みに沿う言葉にのみ注目してしまった。
↓
・語りを的確に理解する視点の獲得
・他者の経験の理解には、問題の誤認を経由し、それまでと異なる視点を手に入れる過程。
●ライフストーリーを理解してもらうために
・読者に知見を共有してもらうには、語りを理解可能にする視点もあわせて共有してもらう必要がある。
・語り手と聞き手の語りの「内容」だけでなく、「語り方」を提示することで、新たな視点を獲得するにいたった過程を示すことができる。
・読者は聞き手の側に身を置いて遡及的にその過程を経験する。これにより読者もその視点を得ることができる。
文献
西倉実季 2015 なぜ「語り方」を記述するのか(2章),桜井厚・石川良子(編)ライフストーリー研究に何ができるか―対話的構築主義の批判的継承,新曜社.