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レヴィ=ストロースとレヴィン

レヴィ=ストロースのアグレガシオンの口述試験について

「私が籤で引いた課題が、またとてつもなくわけのわからない代物でした。「応用心理学なるものは存在するか?」というのです。アンリ・ワロンが試験官の一人でしたが、きっと彼が出した課題にちがいありません。」(p.26)

レヴィ=ストロースの回答や試験官の意図は別として、この問いにどう応えるかは現代ではとても興味深い。「当たり前だ」という即答とは異なる態度をどう探れるだろう。

 

あるアメリカ人の女性が、レヴィ=ストロースがフランスに帰ったのはアメリカでポストが得られなかったから、と書いていたことを発端に、レヴィ=ストロースがエリボンに語ったこと。

 

L=S:アメリカ人から見れば、ヨーロッパに戻るなんてそれ以外の説明のしようがなかったのでしょう。・・・略・・・実際には、私はその気さえあれば、ずっと早くアメリカに居つくことはできたのです。ごく初めの頃、クルト・レヴィンが安定したポストを紹介してくれていたのですからね。(p.108)

 

レヴィ=ストロース,C.& エリボン,D.竹内信夫訳 1991 遠近の回想,みすず書房

 

ヴントとマリノフスキー

マリノフスキーのフィールドワークまで、ヴントの出会いについて、谷口(1987)に依拠してまとめておきます

 

Bronislaw Malinowski

1884:ポーランドクラクフに生まれる

1902:ヤギエウォ大学に進む

・物理学と数学を専攻

1908:博士の学位を取得

・健康上の理由、『金枝篇』に魅せられたこと等をきっかけに人類学にすすむ

・その後、ライプツィヒ大学のカール・ビュッヘルとヴィルヘルム・ヴントのもとで民族学を学ぶ

・「このころはまだ人類学という言葉を使わないで「フェルカークンデ」(Völkerkunde、諸民族の学)というコトバを使っていました。その後、ヴィルヘルム・ヴントという哲学者・心理学者についた。」(山口,1982,pp.7-8)

1910:イギリスに渡り、ロンドン・スクール・オヴ・エコノミックスでセリグマンやウェスタマークの指導を受ける

ケンブリッジ大学のハッドンやリヴァース等と親交を結ぶ

1914:オーストラリアに渡る

・東ニューギニア島嶼民社会の調査

・第1回:1914年9月~1915年3月 トゥーロン島のマイルー族社会を中心に(30歳)

*日記の第一部は1914年9月~1915年8月まで

・第2回:1915年6月~1916年5月 トロブリアンド諸島

・第3回:1917年10月~1918年10月 トロブリアンド諸島

*日記の第二部は1917年10月~1918年7月まで

 

谷口佳子 1987 訳者解説 マリノフスキー,B.マリノフスキー日記,平凡社

山口昌男 1982 文化人類学への招待,岩波書店.(岩波新書

 

 

重回帰分析の補足

決定係数の値をどうみるか、多重共線性の問題を回避することを念頭に、説明変数間の相関が高すぎるとはどのくらいかという課題がありました。

 

「人間科学において、弱い相関係数を認めるのが相関係数0.3くらいからであったことを考えると、重相関係数も0.3くらい、決定係数で考えれば0.3^2≒0.1くらいから何らかの予測ができていると考えるのが通例です。」(石井,2014,p.188)

 

「回帰係数の符合が相関係数と異なるのは、多重共線性が生じているひとつの目安ですので、注意して結果を見てみるとよいでしょう。しかし、符合が異なることがあれば、いつも多重共線性が起きているとは限りません。」(清水・荘島,2017,p.87脚注)

「多重共線性の原因となる変数を知るための指標として、分散拡大係数(variance inflation factor:VIF)があります。・・・VIFが10を超えると、多重共線性が生じると言われています(たとえば早川,1986)。・・・しかし経験上、VIFが5ぐらいでも、標準誤差が大きくなって解釈が難しくなることもあります。」(清水・荘島,2017,pp.87-88)

 

関連して説明変数が多いことの問題も指摘されました。

相関係数とは違い、重相関係数は独立変数の数に影響される。変数が増えれば増えるほど説明率は増大していく。従って重相関係数の値を絶対的な値として評価することはできない。変数が5個で重相関係数が0.95は高い値と判断するかもしれないが、変数が50個で0.95なら逆に低い値と見なされるかもしれない。」(小野寺,2015,p.113)

 

「重回帰分析では、説明変数の個数が増えれば・・・寄与率は自動的に大きくなるという性質がある。つまり、説明変数が1つの場合の寄与率と説明変数を2つにした場合の寄与率とを比べると、つねに後者の方が大きくなる。意味のない変数を説明変数に追加することによって見かけ上の寄与率が増加するのは好ましくない。そこで・・・自由度を用いて調整(する)・・・自由度調整済寄与率(をもちいる)」(永田・棟近,2001,p.70)

 

文献

石井秀宗 2014 人間科学のための統計分析.医歯薬出版.

永田靖・棟近征彦 2001 多変量解析法入門.サイエンス社

小野寺孝義 2015 重回帰分析,小野寺孝義(編)新訂 心理・教育統計法特論.放送大学教育振興会

清水裕士・荘島宏二郎 社会心理学のための統計学誠信書房

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