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オンラインイベント 「愛を語れ!!~あなたのお気に入りの一作は何ですか~」 終了のお知らせ

 この記事は、2020年12月19日土曜日に開催した、土倉ゼミ2年生主催のオンラインイベント「愛を語れ!!~あなたのお気に入りの一作は何ですか~」についての内容となっております。そのイベントが、4人の参加者の方々に集まっていただいたおかげで、先日無事開催することができましたので、その報告をさせていただきます。

 

 私たちは「同じ趣味を持つもの同士での交流を通じて、趣味を共有できるようなつながりを作る」というねらいをもとに、このイベントを企画しました。本企画で扱ったテーマは映画です。また開催方法は、zoomでした。イベントの大まかな流れとしては、参加者の方々に自分のお気に入りの一本を選んでいただき、その作品がいかに素晴らしいかについて他の方々に紹介してもらいます。その後、親睦を深めてもらうためにグループに分かれて交流会を行いました。最後に最も愛が伝わった紹介をした方を投票で決め、発表しました。イベントの開催時のタイムスケジュールは以下のようになっていました。

 

17:00~17:05はじめの挨拶、ゼミ生の自己紹介

17:05~17:15参加者の自己紹介、アイスブレイク(緊張をほぐすための簡単なゲーム)

17:15~18:05発表の説明、発表会、結果集計(一人につき紹介7分、質疑応答3分)

18:05~18:25一回目の交流会

18:25~18:45グループを変えて二回目の交流会

18:45~19:00結果発表、終わりの言葉

 

ここからは各プログラムについて報告していきます。

 

・参加者の自己紹介、アイスブレイク

少しでも参加者に会話をしてほしかったので、その人の次に自己紹介する人に質問を投げかけて、その答えを含めて自己紹介をしていただくという形をとりました。そしてアイスブレイクは口パクしりとりを行いました。これはzoomをミュートにして言葉を発し、その言葉を予想してまたミュートで言葉をつないでいき、それを繰り返していくといったものです。はじめのプログラムなので、参加者の方々も緊張しておりあまり盛り上がらないかなと思っていたのですが、どなたも気さくな方々でとても良い雰囲気になりました。私たちも話しやすくなりました。

 

・発表会

まず各発表につき紹介7分、質疑応答3分ということを説明しました。発表方法は自由としました。すると、パワーポイントや手書きの絵、感動するポイントを想像させるスピーチ、私物のポスターを交えながらと、様々な方法を用意していただきました。そして、紹介していただいた作品もアクションやヒューマンストーリーなどそれぞれ異なっていました。皆さんの紹介はどれも素晴らしくて、ゼミ生一同その作品を見てみたくなりました。すべての発表で質疑応答やコメントが多く出て、大変盛り上がりました。その後、zoomのチャット機能でホスト宛に最も心に残った発表をした方の名前を送り、票を集めました。参加者の方々は1票、ゼミ生と土倉先生の8名は0.5票としました。

 

・交流会

発表会の盛り上がったため、各交流会20分だったところを、急遽変更し15分で行いました。もちろん先ほどの発表の話や映画の話をされていたのですが、それ以外の個人的な話もされていました。ファシリテーターとして交流会に参加したゼミ生も「いろんな話ができたし、自分も質問されてとてもいい雰囲気だった。時間が短く感じた。」と話しており、楽しめた様子でした。参加者の方々全員がSNSを交換されており、親睦も深まったものと思います。

 

・結果発表、終わりの言葉

 票が割れて接戦となり、同率1位という結果で終わりました。順位はついたものの温かい雰囲気で終えることができました。最後に、予定していた終了時刻を過ぎていたにもかかわらず参加者の方々のご厚意で少し残っていただき感想を聞きました。すると「楽しかった」や「もう一度あれば参加したい」などポジティブな言葉を多く聞けたので、大変うれしくまた安心しました。

 

 以上のような形でイベントは終了しました。何より参加者の方々に楽しんでいただいただくことができて、本当に良かったです。男性女性、中学生から社会人の方といった様々な方に参加していただきました。SNSで広報を行っていたため、私たちの顔も分からないにもかかわらず、ダイレクトメッセージにお返事をくださりご参加を決断していただき、まことにありがとうございました。

 

                              土倉ゼミ2年生一同

陰とやさしさ

私達が関心を寄せる人間関係の周囲を照らすために、臨床心理学者の河合隼雄が記した「大人の友情」からいくつか引いてみる。重なる部分、重ならない部分を考えてみたい。

「友情を支えているものは何だろう。直接的な実利のある関係は大切ではあるが、友人関係とは言わない。単なる「知り合い」も違う気がする。もっとも、すこし知りあっても「友人」と考えて、友人の数が多いのを自慢する人もいるが、やはり、単なる知人というのを超えて、友人を考えるのが、普通だろう。そこには、二人の関係を支えているXがあり、そのXが直接に利害関係では説明できないところに、友情の妙味がある。」(p.29)

「どんなに立派な人、人格高潔な人も心のどこかには陰がある。ただ、それとどのような形で生きてゆくか、というところに難しい問題がある。陰があるのは残念だし、悪は許容し難い。しかし、それによって人を全面拒否するのはおかしい。人生の、友情の味にはほろ苦さが混ざっている。」(p.120)

「友人との関係が深くなるにつれて、その影の部分が明らかになるにもかかわらず、なお友人関係が続くためには、そこに「やさしさ」がなくてはならない。/友人の欠点や、時には悪事をさえ知るかもしれない。それを肯定することはないが、非難する前に、まずそのようなことのある人間としての苦しみや悲しみの方に身を寄せる。その気持を共にした上で、それからのことを考える。外から見て批判し、非難する以前に、内側に共に立って感情をわかちあう、やさしさが友情を支える。」(p.39)

 

そのやさしさはどこから来るのか?という問いに河合は回答を与えている。その回答は、残念ながら私たちが追究している問いの回答になるものではない。さて、河合は何と回答しているのか、そして、その回答を踏まえて私たちは何を考えるのか。

 

河合隼雄 2008 大人の友情 朝日新聞社朝日文庫

意味を発揮する文脈

ある言葉が意味を発揮する文脈をさがすことを考えたときに、ヒントになりそうな議論を参照する。

アレクサンドル・ルリヤは、頭部外傷を受けたザシェツキーの記録をまとめている。ザシェツキーは空間認知の問題、言葉の認識の問題、言葉を思い出せない問題などを抱えている。言葉を思い出せない問題は、ザシェツキーの記録を読むかぎり、あたかも部屋のなかで探し物をしているときのように言葉を探しているような具合である。この問題について、ルリヤが言及している部分。

「ある単語を想起するときに、私達は常にいろいろな多くの可能な選択肢からそれを選ばねばならない。ある場合は正しい連想がたいへん浮かんできやすく、他の連想が生ずる可能性はほとんどないに等しいことがある。たとえば、あなたが次の文「冬になれば、街路は・・・・・・でおおわれる」を完成しなければならないと仮定しよう。もちろん「雪」だ。「雪」以外の単語を思い出すとはまったく考えられない。選択は単純である。ここでは二、三の可能性しかない。しかし、しばしば状況はもっとずっと複雑である。次の文「・・・・・・を買うために外出した」を問題としてみよう。この場合、「・・・・・・」の部分に何を埋めればよいであろうか?「パン」で埋めるべきであろうか?「新聞」だろうか?「帽子」だろうか?この場合、正しい単語を発見する可能性は明確ではない。記憶の貯蔵庫から正しい単語を選ぶために特定の情況についてもっと多くの情報を必要とするからである。/しかし、もし文脈はなく、そしてただ一つの単語を見出さなければならないとするならばどういうふうにさがすだろうか?」(pp.154-155)

読むひとに意味を発揮する文脈を提供する、あるいは、意味を発揮する文脈を無視していることを可視化する文脈を提供する、ということを考えてみる。

(後者は、たとえばきちんと「読まれずに」なされた指摘が無意味・すれ違っていることを、別の読むひとに示す、といったこと)

 

ルリヤ,A.R.杉下守弘・堀口健治訳 1980 失われた世界―脳損傷者の手記.海鳴社

 

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