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みかん、資源を媒介とする創作活動

資源を媒介とする創作活動へのアプローチについてまとめておきます。

 

■みかんを食べる

・はじめに、みかんを食べる場面を考えてみましょう。この場面でなされる行為に切れ目を入れてみます。たとえば、つぎのようになります。

 

みかんを手にとる→みかんの皮をむく→口に入れられる量のみかんをとる→そのみかんを口に運ぶ

 

・あたりまえのことですが、後の行為を行なうためには、そのひとつ前の行為を行なわなければなりません。

 

みかんを口に運ぶ

 ↑

口に入れられる量のみかんをとる

 ↑

みかんの皮をむく

 ↑

みかんを手にとる

 

・ひとつ前の行為がなされないと、つぎの行為の遂行は不可能です。そのため、ある行為が、次の行為を可能にする状況(条件)を作っている、と言えます。

・この例は、(小さな)行為が連続的になされることで、みかんを食べる、という(大きな)行為が成し遂げられるものです。(補足1)(補足2)

 

■行為間の関連

・ただし、前の行為が後の行為の前提条件となる、というつながりとは異なる場合もあります。

・たとえば、食事を終えて片付けを行なっているとします。食事の片付けに必要な行為として《食器を流しに運ぶ》《食器を洗う》《テーブルをふきんで拭く》《調味料をもとあった場所しまう》があるとします。

・このとき、《食器を流しに運ぶ》は《食器を洗う》(さらに「コップを洗う」「皿を洗う」「箸を洗う」など)の前提条件になりますが、《テーブルをふきんで拭く》《調味料をもとあった場所しまう》とはそのような関係にありません。

・さらに言えば、《食器を流しに運ぶ》と《調味料をもとあった場所しまう》は同時に取り組むこともできるかもしれません。

・このように、行為がどのようになされているか、相互にどのような関連にあるか、といったことを確認していくことができます。

・このとき、重要なこととして、2点挙げられます。

・1つは、行為をどの単位で切り取るか(このあたりは生態心理学の知見を参照しましょう)。もう1つは、行為によって、資源の状態はどのように変わるか、です。

・食後にテーブルで《宿題をする》子どもは、お父さんにほかの行為よりも早く《テーブルをふきんで拭く》をしてほしいと思っているかもしれません。これは先の「前提条件」ほど強い結びつきではありませんが、ある行為をスムーズに進めるうえで求められる行為と言えます。

・私たちは行為によって周囲の環境に働きかけ、その状態を変えながら、行為を継続していきます。

 

■創作活動

・創作活動は人(あるいは人びと)が資源に働きかけて、その状態を変えたり、資源と思われていなかったものを資源として利用するようになったりしながら展開していきます。

・ただし、創作活動の創作活動らしさは、上記のみかんや食後の片付けよりもはるかに、行為の連結の仕方のヴァリエーションが多いこと、時間の隔たりのヴァエリエーションが多いことにあります。それでは、上記のようなアプローチができないかと言えばそうではありません。

・簡略化しすぎていますが、例を挙げてみましょう。結果的に何らかのプロダクトが作成された創作活動について、事後にふりかえってみると、プロダクトの創作に資源A(状態2)、B(状態5)、C(状態3)、D(状態2)、E(状態1)が必要だったとしましょう。その状態変化を仮につぎのように描いてみます。

                        → Time

資源A:状態1 → 状態2

資源B:状態1 → 状態2 → 状態3 → 状態4 → 状態5

資源C:      状態1      → 状態2 → 状態3

資源D:状態1                       → 状態2

資源E:                      状態1

 

・このように、資源に注目すると、当初、資源に働きかけるなかで、状態が変わったり、他の資源が表れたりしながら、結果的に創作活動が成し遂げられたことが見えてきます。

・上の図に示されていないのは、それぞれの「状態」がどのようなものか、「→」はどのような働きかけであるか、「資源相互」にどのような関連・働きかけがあるか、といったことです。

・さらに、重要なのは、最終的なアウトプットには関連のない資源があることです。こうした資源は、少なくとも概念的には2種類考えることができます。

・1つは、最終的なアウトプットに資する資源の変化と関連のないもの、もう1つは、最終的なアウトプットに資する資源の変化と関連のあるものです。創作活動をとらえる上ではこうした消えゆく媒介者についても押さえておく必要があります。

・以上のことが研究で示されるべきことになるでしょう。

(上記の詳細は土倉の研究をご覧ください。)

 

(補足1)

・前の行為は、自分でやらなければならないわけではありません。変な例ですが、一連の流れがA・B・Cさんの協同でなされることも可能です。ただ、このときも、ひとつ前の行為がなされなければ、一連の流れは達成されません。

 

Bさんが、みかんをCさんの口に運ぶ

 ↑

Bさんが、口に入れられる量のみかんをとる

 ↑

Aさんが、みかんの皮をむく。皮がむかれたみかんをBさんに渡す

 ↑

Aさんが、みかんを手にとる

 

(補足2)

・会話も同様にとらえることができます。通学時に出会った2名の会話を考えてみます。

A:「おはよう」

B:「あっ、おはよう。2限、社会心理学の試験だよね。」

A:「昨日バイトで全然勉強できなかったんだけどー」

B:「私も―」

 

・Aさんの発話が、Bさんの発話の文脈を作り、Bさんの発話がAさんの発話の文脈を作る、という具合に発話がなされていく、このようにとらえることができます。

 

以上

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